ディンマスの子供たち (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

  • 国書刊行会 (2023年3月27日発売)
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トレヴァーがこんなにダークになれるとは知らなかった。カフカ少年(春樹)が世界一タフな15歳の少年なら、ティモシー・ゲッジは邪悪な15歳。「子供たち」なのでスティーヴンやケイト、家出したネヴィル・ダス、ラヴィニアが失いミス・ラヴァントから生まれたかもしれない子供まで含めた「子供たち」なのではないか。ティモシーの造形が、悪魔やサイコパスで片づけられない人間臭さ、アイルランド出身のバリー・コーガンがうまく演じそうな気持ち悪さ、そのさじ加減が絶妙だ。ティモシーは貧しく孤独で未来に希望もない、そんな少年を生み出したディンマス社会の業が暴かれるようで居心地が悪い。ぞわぞわして不気味だが、「虐げられた人間が語る飾り気なしの事実」だとしたら、少年を悪魔として排除できるだろうか。面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外
感想投稿日 : 2023年8月26日
読了日 : 2023年8月21日
本棚登録日 : 2023年7月1日

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