深瀬和久は事務機会社に勤めるサラリーマン。
今迄の人生でも取り立てて目立つ事もなく、平凡を絵に描いたような男だ。
趣味らしいことといえば、コーヒーを飲む事だった。
アパート近くの〈クローバー・コーヒー〉というコーヒー豆専門店が、
深瀬の行きつけのお店で、唯一リラックス出来る場所だ。
そこで、知り合った起智美穂子という彼女も出来た。
そろそろ関係を深めようと思っていた矢先
謎の発発文が彼女に送り付けられた。
そこにはたった一行『深瀬和久は人殺しだ』と書かれていた。
深瀬を問い詰める美穂子。
ついに〝あのこと〟を話す時が来てしまったのかーー。
同様の告発文が、ある出来事を共有していた
大学のゼミ仲間にも送り付けられていた。
誰が、何のために告発文を送り付けたのか?
あの忌むべき事件を蒸し返そうとしているのか?
真相を探るべく、深瀬は動き出す。
人生初の親友・広沢由樹
どんな人生を送って来たのか、遡っていきたい。
しかし、長い線の上に点でのみ存在しているようなものだと気付く…。
親友のはずなのにあまりにも知らない事に気付く…。
過去から現在までの人間関係を調べていく。
そこで知る事となる自分から見ていた広沢と、
他人から見えていた広沢の姿の違い。
あおいと古川の言葉は凄かったなぁ…。
広沢と親友だと思っていたのは自分だけではないかと、落ち込んでいた
深沢だが、一方通行ではなく広沢からも特別だと思われていた。
一度は自分の元から去っていた美穂子とも歩み寄れて、理解し合う事が出来
少し温かくて優しい気持ちに包み込まれていた…その時、
地獄へと突き落とされるラスト。
ゾワッてしました。
湊さんの作品は女性が主人公で女性目線で進行していくのですが、
本作は、自分は常に脇役だと自覚している。
卑屈で、劣等感の塊のような深瀬。
そうだよね~男性の友情や立場も女性同様色々あるんだなぁって。
繊細で優しい深瀬なのだと思いますが、同性でないせいか
少しもどかしかったです。
友人の死を秘密に持つ4人それぞれ異なる良心の呵責や自己保身
人としての劣等感・欺瞞・嫉妬心・優しさ・気遣い・思いやり・心の広さ
色んな心情描写をとっても繊細に繊細に描いていました。
- 感想投稿日 : 2016年2月27日
- 読了日 : 2015年6月27日
- 本棚登録日 : 2016年2月27日
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