モノクローム

著者 :
  • 新潮社 (2014年6月20日発売)
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本棚登録 : 217
感想 : 37
3

5歳の時3日後に帰ると言って出掛けたあの人。
どうして帰って来ると言ったのに帰って来なかったんだろう。
あの夜、僕を捨ててまで彼女は一体何をしていたのだろう。
あの人が、僕に対するよりもずっと真剣に
夢中になって見つめていたもの…囲碁
沖田慶吾13歳だったあの夏。
彼女と初めて対局し、完膚なきまでに負かされた。
あの日からずっと、一人になりたかった。
早く大人になるんだ。一人でも生きて行ける大人に。
そして、あの人にやり返す。復讐してやる…。

慶吾は5歳の時に母親に捨てられ施設で育った。
慶吾は自分の寂しさを隠し、大人びた子供となる。
高校でも友人を作らず、敢えて一人でいた。
囲碁に打ち込む慶吾の姿を写真に撮りたいと言ってきた香田
正直で一直線な香田純隆
屈託のない香田の態度や言葉…慶吾の唯一の友人になった。
良かったね。

香田が父を亡くした哀しみを他人事の様に捉え
勝手に苛ついて、ひねくれて子供の駄々のように…。
でも、きちんと香田の気持ちに向き合えた。
謝りたいのに謝れず…来るはずのない香田の為に
自分の食費を削ってまで香田の好きなコーラを買い続ける慶吾…。
痛々しかった。
香田と仲直りしたシーンでは、涙がほろりと零れました。
一人で居たかったと思っていたが、一人でいるのと一人になるのは
全然違うって気付いた。
香田の言葉に背中を押され、今迄心の扉の奥の奥の奥深くに、
蓋をして見ない様にしていた、母の家出の理由と向き合う事に…。

母が慶吾を捨てた日。彼女は大きな囲碁の大会に出ていた。
その時の棋譜を見れば、彼女の心の動きがわかる。
でも、囲碁がわからない私には、大切なそのシーンに
入り込めなかったのが、残念でした。

苦しみもがいて生きて来た慶吾
でも、最後には母の幸せを心から喜べた。
もう、大丈夫だね。

表紙が可愛くて借りた本…乾さん、初読みでした。
心理描写がとっても繊細で好きでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 家族小説
感想投稿日 : 2016年2月27日
読了日 : 2015年1月15日
本棚登録日 : 2016年2月27日

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