★3.5
怖かったのも、触れたかったのも、おかあさんの手だったー。
それぞれの家にそれぞれの事情がある。
それでもみんなこの町で、いろんなものを抱えて生きている。
ある新興住宅地の街を舞台に、虐待という暗く重い題材で
進む5つのお話が少しずつ繋がっている。
夕方5時まで家に帰る事を許されない神田さん。
雨の日も校庭に佇む神田さんと新任教師との心のふれあい…。
自分の中の澱んだ水かぽちゃぽちゃ音を立て始め、
どうしても娘に手を上げてしまう母親とママ友の物語…。
色んな人の目線で虐待というテーマを捉えてる。
目には見えにくいネグレクトや親から子へ受け継がれる虐待の連鎖が、
それぞれの物語の中で上手に表現されていた。
静かな文章で静かに描かれてる。
「幸せ」と「仕合わせ」…二つの言葉が印象的でした。
「たとえ別れても、二度と会わなくても、一緒に居た場所がなくなったとしても、
幸せなひとときがあった記憶が、それからの一生を支えてくれる。
どんな不幸な事があったとしても、その記憶が自分を救ってくれる」
というメッセージが救いになりました。小さな温もりがありました。
読んでて辛かったし、苦しかったし、虐待をしてる親が腹立たしく感じた。
でも、やはり経験がないから、周りにも誰一人いなかったから
どこか遠い世界の様に感じてる自分がいました。
そう感じる事が駄目だってわかってるのですが…無理でした。
「声掛け」ちょっとした言葉に救われるのですよね。
全ての作品が誰かの思いやりや言葉に寄って光がもたされる
優しい結末になっていて良かったです。
- 感想投稿日 : 2016年3月3日
- 読了日 : 2015年11月4日
- 本棚登録日 : 2014年11月1日
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