お葬式

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2015年2月12日発売)
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本棚登録 : 145
感想 : 36
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大学生の在は、2年前に母親を亡くして以来、
父・和彦と二人で助けあって暮らして来た。
父親は、在にとって憧れで尊敬する完璧な存在だった。
そんな父が、百合の花を買いに出掛けて事故死した。
几帳面な字で書かれた驚くべき遺言を手にした。
『葬儀不要、戒名不要、弔いごと一切不要…。
ある程の、百合を投げ入れよ 棺の中』
在は茫然とした。わけがわからない…。


事故の夜、一本の百合を持った少女が家の前に居た。
彼女は姿を消したものの、父の遺品のアルバムの中で
少女とそっくりな女性を見付けた在。
遺品を整理していた在は、何も書かれていない母子手帳を見付ける。
子供の名前は確かに自分だが、母親の名前は見知らぬ「森下翠」
父親には恋人や産まれなかった赤ん坊が居たのか…。
自分は、その赤ん坊の偽物なのか…。
亡くなった母は本当に愛されていたのだろうか…。

父の過去を調べていくうちに、自分の知ってるいる父と
全く違う父の姿が浮かび上がってくる。
少しずつ明らかになってゆく謎と秘密。
在と一緒にドキドキしながら読み進めていった。
二十年も前に死んでしまった伯母に支配されてる森下家。
縛られてる、囚われてる、魅せられてる水樹。
愛の無い家庭から逃げ出すしかなかっ高丘。
哀し過ぎる…。
とっても丁寧に描かれていて、情景や匂いまで漂って来そうだった。
何とも言えないネットリした重苦しい雰囲気や空気感。
息苦しい程だった。

ラストは、綺麗に纏められてて良かったって思ったけど、
何だか、スッキリしなかった。
でも、愛されて育つ大切さがヒシヒシと伝わって来る作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 家族小説
感想投稿日 : 2016年2月27日
読了日 : 2015年6月20日
本棚登録日 : 2016年2月27日

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