千載一遇の大チャンス

  • 講談社インターナショナル (2008年12月18日発売)
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長谷川慶太郎の最新刊(2008年12月29日発行)。世界経済全体を襲った「金融危機」は、日本にとってむしろ「ダメージ」が軽く、逆にそれをプラスに転じることもできる「千載一遇の大チャンス」のチャンスであるという。相変わらずの楽観論だが、日本が世界の流れを先取りしている個々の事例を挙げて論じているので、事実そのものは大いに参考にすべきだろう。

日本は、「金融危機」の発生地であるニューヨークよりはるかに激しい株価の下落に見舞われたが、これは「換金売り」であって、合理的な採算に基づくものではない。したがって、「金融危機」の荒波から比較的安全だった日本に、資金を移動し、投資する動きが必ず起るだろうと、著者はいう。円高も長期に続くことはないと断言し、1ドル100円を割る円高は間もなく終息するのではないかともいう。

また他の著作でも何度も指摘しているが、大きな戦争がない現在、経済の基調は必ずデフレになるという。原油や穀物の相場が高騰し、物価高に日本全体が不安におののいていたころも、著者のこの主張は全く変らなかった。変らないどころか、平和とデフレという基本的な流れに基づいて、21世紀はたいへん明るい時代になるだろうというのが、本書のテーマであり結論である。

著者は、工業技術や軍事に専門的な知識を持ち、この分野での具体的なデータに基づいた主張は、傾聴するに値する。たとえば、これも著者の多くの本で取り上げられることだが、日本の工作機械の市場占有率が27%(2005年)と圧倒的なシェアを誇り、しかもNC(数値制御)装置つきの耕作機械など、その質のおいてもダントツの存在になっていること。大型原子力発電所を建設する能力は、日本にしか存在しないことなど。日本の技術力の強さは、今後ますます世界経済を下から支える基盤としての重要性を増していくだろう。また、米国の世界を圧倒する軍事技術という事実などに基づいてなされる、21世紀が「米国主導の一極支配体制」になるという主張も一考に価する。

ただし、世界経済を襲った金融危機と世界同時不況が、なぜ日本にとって千載一遇のチャンスになるのか、金融危機のダメージが少なかったからだけなのか、その具体的な説明は、あまりなかったように思う。読後に物足りなさを感じたのはそのせいか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ■最近、読んだ本(ビジネス経済系)
感想投稿日 : 2008年12月21日
読了日 : -
本棚登録日 : 2008年12月21日

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