最近若手(?)美術史家の、木村泰司、池上英洋、中野京子などの「名画の見方」の類の本が多く出回っているが、やはりこの道の大御所である高階秀爾のオーソドックスな西洋絵画の入門書は、一味違う感じがしました。
冒頭に「美術の専門家にとっても、画家について、作品について、調べれば調べるほどわからないことばかりと言ってもいい。だが、そのようにして多くの作品に接し、互いに比較し、また歴史や背景を探っていくうちに、まるで山道で突然、眺望が開けるように、今まで気づかなかった新しい視点が浮かび上がってくる。それは思いがけない細部の特質であったり、歴史とのつながりや、あるいは画家の仕掛けた密かな企みなど、さまざまだが、そのことに気づいて改めて絵を見直してみると、そこに新たな発見があり、理解が深まり、喜びと感動は倍加する。『絵の見方』というようなものがもしあるとすれば、そのような視点を見出すことにほかならないだろう」とある。
こういう長年に渡り絵画を見つめてきた人だから出来る濃厚な入門書に仕上がっている。
取り上げられているのは、ルネッサンス前後~現代にいたる24人の画家が取り上げられている。
不満だったのは「ミケランジェロ」が取り上げられていないことだが、ミケランジェロ本人はシスティーナ礼拝堂天井画を描いた時のサインに「彫刻家・ミケランジェロ」とサインしているなど、常に彫刻家であることを自認していたが、著者もミケランジェロは画家ではないと判断したのであろうか?
絵画に興味のある人には、是非一読をお勧めします。
- 感想投稿日 : 2015年11月8日
- 読了日 : 2015年11月8日
- 本棚登録日 : 2015年11月8日
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