サブタイトルに「京都太秦の職人たち」とあるように、時代劇の俳優ではなく制作に関わってきた、スタッフや裏方の人々の苦労と努力と喜びが熱く語られている。
時代劇は1950年代の東映時代劇の頃がピークであり、「知恵蔵のいれずみ判官」「右太衛門の旗本退屈男」「錦之助の一心太助」「橋蔵の葵新吾」などのスーパーヒーローが観客を魅了した。その全盛期から、一気に斜陽産業になり、テレビの時代への変化へと移っていったが、その中でも、時代劇は、「銭形平次」「紋二郎」「必殺仕掛け人」「暴れん坊将軍」などの作品を作り続け生きながらえた。その時代劇を裏から支えた人間の生き様を丹念に描いている。
本書のオリジナルは2006年に書かれ、「時代劇は死なず」とハッピーエンドで終わっているが、この間時代劇を取り巻く環境は日々悪化しており、今や絶滅危惧種のような状況になっている。
今回の文庫化に当たり、著者は「今に繋がるサバイバルの戦いを描いたつもりでいたが、結果として失われてしまった、古き良き時代を記録しただけの作品になってしまったのかも知れない。そうなるとこのタイトルはもう合わないのかも知れない。それでも復刊に当たってタイトルは変えたくなかった」と書いている通り、時代劇への熱い思いがヒシヒシと伝わってくる作品です。
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- 感想投稿日 : 2015年5月6日
- 読了日 : 2015年5月6日
- 本棚登録日 : 2015年5月6日
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