帚木蓬生氏が2009年に書き下ろした庄屋や農民達を主人公とした珍しい歴史小説『水神』を読了。2016年の最初い読む本なのでちょっと骨太な物を思い面白そうだと思いながらも積読本であった上下刊を取り上げ読む事にした。結局この作品を選んだ事は大正解で大感動の作品だった。電車の中で読んでいるときに不覚にも泣きそうになってしまい困ったほどだ。まずこのお話は1660年前後の九州福岡県久留米地方を舞台にした実話だということだ。もちろん残された資料に基づいて構築された大部分が作られたお話であるのはわかってはいるのだが、この小説を読み始めた数ページ後には作り話ということを完全に忘れ去り、ドキュメンタリーを読んでいるような気持ちで読み進めていた。水利が悪く、他の地方で豊作の折にも年貢を収めるのがギリギリであった地方の意識の高い五人の庄屋が堰をつくり水利改善を行い農民を救いまたその地方をいまあるような豊かな土地へと変貌させたという壮大な、江戸時代の『プロジェクトX~挑戦者達』みたいなお話だ。まさに中島みゆきの『地上の星』がBGMに似合う小説だった。著者は精神科医であり二足のわらじで小説家をされているそうですがそれまた驚きです。おすすめです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2016年1月8日
- 読了日 : 2016年1月8日
- 本棚登録日 : 2016年1月5日
みんなの感想をみる