敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年10月25日発売)
3.63
  • (9)
  • (36)
  • (26)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 171
感想 : 36
4

ツイッターでおススメいただいた初めての作家さん。
物語は一転二転三転とたいへん興味深く読めたが、いちばん恐れ入ったのは作者さんのプロフィール。

====
東大法学部卒。弁護士として活動したのち、60歳で執筆活動を開始。2010(平成22)年『鬼畜の家』で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、同作で翌年作家デビュー。
====
すばらしいバイタリティーだ。もうこれだけでもっとこの人の作品を読んでみたくなった。人生経験も豊富だろうし、ぜったい面白いに違いない!


さて、本書は次のような内容だ。
====
食い違う証言が導く真相とは!? "告白"だけで構成された大逆転ミステリ

とある山荘で会社経営者の妻と8歳の息子が転落死した。
夫は無実を主張するも、容疑者として拘束される。しかし、関係者の発言が食い違い、事件は思いも寄らない顔を見せはじめる。
遺された妻の手記と息子の救援メール。事件前夜に食事をともにした友人夫妻や、生前に妻と関係のあった男たちの証言。容疑者の弁護人・睦木怜が最後に辿り着く、衝撃の真相とは!?
関係者の“告白”だけで構成された、衝撃の大逆転ミステリ。
====

とくに妻の人柄が証言する人によってずいぶんと異なる。人は一面とは限らないというお手本のような描き方に、本当の姿はどうだったんだろうかと興味が最後まで引き付けられた。
そしておそらくはごくふつうの男の子なのに性格異常者として語られる8歳の息子くんと彼を取り巻く隣の家族への社会的影響とか。
それを見事に跳ね返して生きていく決心をした隣家族の奥さんの潔さと太陽のような強い明るさがよかった。

この作品を嫌ミスとしている方もいるようだが、私は嫌ミスの範疇ではないと思う。
世間的に、表面的には裕福で幸せに見えるある家族の本当の姿を事件の真相を知るために暴かざるをえないという作品だ。

最後の最後、「終章 決着」。
ああ、やっぱりそうなるよね、と納得の結末だった。

登場人物たちの隠されたキャラ造形もふくめ、すべてのロジックに納得がいった作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月3日
読了日 : 2023年1月3日
本棚登録日 : 2023年1月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする