沈黙の春

  • 新潮社 (2001年6月21日発売)
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アメリカでは、春が来ても自然は黙りこくっている。自然を破壊し、あらゆる生命を蝕むしばむ化学薬品の恐ろしさを、アメリカの生物学者が告発した書籍。

地上に生命が誕生して以来、生命と環境は互いに力を及ぼしあい、何千年という時をかけて、生命と環境の均衡(バランス)をつくりあげてきた。だが人間は、20世紀というわずかの間に恐るべき力を手に入れ、自然を変えようとしている。

人間がつくり出した化学薬品は、農園や森林など様々な場所で使われている。それは特定の雑草や虫を退治するためのものだが、結局、生命あるものすべての環境を破壊する。

人間は自然を単純化することに注力し、自然が様々な種類の生物の間につくり出してきた均衡を破壊してしまった。例えば、広大な農地に1種類の作物だけを植える農業形態をとるようになると、ある種の昆虫が大発生した。

水の汚染は、環境全体の汚染と切り離して考えることができない。原子炉、病院などからは放射能のある廃棄物が、都市からは下水が、工場からは化学薬品の廃棄物が海へと流れこむ。これらは互いに作用しあい、姿を変え、毒性を増す。

土壌の世界は、様々な生物が織りなす糸によって、互いに依存している。生物は土壌がなければ育たず、土は生物が栄えてこそ生きたものとなる。だが、この世界に化学薬品が押し寄せたら、個体数の均衡が壊れるおそれがある。土壌の新陳代謝の活動も変化し、もはや実り豊かな土とはならない。

20世紀になって、人間は無数の化学的発癌物質を生み出した。こうした化学物質をすべて取り除くのは非現実的なことと思われる。だが、その多くは人々の生活に不可欠のものとは限らない。それらを取り除けば、癌の脅威も大幅に弱まる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: TP
感想投稿日 : 2021年9月2日
読了日 : 2021年9月2日
本棚登録日 : 2021年9月2日

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