眩葛飾北斎の娘、お栄(葛飾応為)の半生を描いた小説。
浮世絵には詳しくないので、小説内に出てくる作品たちをスマホ画面で鑑賞しつつ読んだ。
一つの絵を産み出すまでの葛藤、苦しみ、喜び。200年前のひとりの女性がどんな思いでこの線を引いたのか、この色を挿したのかと想像を巡らせながら絵を眺めていると、なんともいえない感傷がうまれてくる。
善次郎とのただひとつの恋。お栄はそれを宝物のように胸に抱いて生きていったんだろう。口に出さないその想いはどうしても筆から溢れてしまったんだろうと思うとせつない。
お栄だけじゃない。葛飾北斎、滝沢馬琴、為永春水らの文化人たちが、ただの名前でなく、生きた人間としてそこにいた。高校時代の学習では日本文化史はわりと隅に追いやられていたけど、ひとりひとりに、ひとつひとつの作品に深い物語があるのかもしれないと思うと、人名と作品名をひたすら暗記した受験勉強はすごくもったいないことをしてたんだな。
この小説を読んでいる間、椎名林檎と宮本浩次の獣ゆく細道が脳内にずっと流れていた。
「孤独とは言い換えりゃ自由」
「かなしみが覆い被さろうと抱き抱えて行くまでさ」
この時代に女性が職業を持ち、ひとりで生きていくことはどんなに険しく細い道だっただろう。歯を食いしばって。めちゃくちゃかっこいい、女の人生。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2020年12月11日
- 読了日 : 2020年10月30日
- 本棚登録日 : 2020年12月11日
みんなの感想をみる