昭和軍閥の礎を築いた,として悪名の高い山県有朋を再評価する本。
奇兵隊を指揮し,維新後は徴兵制を始めて国民軍をつくり,軍制改革を推し進めた軍事的リアリスト。奇兵隊も徴兵制も民衆の動員を必要とした。自由民権運動→議会開設→政党政治と時代が進むなか,イデオロギーの波及を避け軍隊内を統制するため,軍人勅諭・参謀本部の設置,統帥権の独立を確立する。山県のこういった仕事が,敗戦後に平和主義の立場から全否定されることになる。
しかし山県は軍国主義の権化だったわけでもない。軍備を充実させるとともに外交も重視していた。義和団事件・一次大戦・シベリア出兵では列国協調外交の観点から出兵を決めた。アメリカの台頭も早くに認識し,対米協調外交を日本外交の基本とした。
ただやはり山県が建国の元勲として長きにわたり,特に陸軍に対して影響力をもち,それがファシズムへとつながっていった感も否めない。明治の富国強兵は開発独裁みたいなもので,それが昭和軍閥の形成につながってく。歴史はずっとつながってる。だから歴史を学ぶんだし,歴史は面白い。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
人物・伝記
- 感想投稿日 : 2011年11月21日
- 読了日 : 2011年5月12日
- 本棚登録日 : 2011年11月21日
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