AIとベーシックインカムという着眼点が良い。
3章以降の、ベーシックインカムとAIの未来の話は面白い。
けれど、1章のAIについても、2章のベーシックインカムについても考察が浅い。
まずAIについて。
音楽や絵画は人間が生み出すからこそ、人の心を揺さぶるものができるのであり、AIが生み出すものは模倣でしかない、としているが、AIがつくりだす音楽は、評価者が「人がつくった」という先入観がない状態であれば、人がつくったものと遜色ないものが生み出されている。
芸術に解釈をもちこむのは、見る人聞く人であり、制作者はすでに人である必要はないだろう。
この本は2018年発行だが、日々進化するAIについて、3年前に書かれた『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か (講談社現代新書)』の方が目新しい内容も分析も深い。
次にベーシックインカムについて。
ベーシックインカムの財政について、試算が、ベーシックインカム導入後現在の終始を保っている前提で計算しているのは、あまりに的外れに思える。
多くの人が仕事を辞めない理由として、他国の実験の結果からも裏付けられるとしているが、そもそも、その支給が恒久的でないのなら、仕事を簡単に辞め、働くことも辞めようと考える人が少ないのは当たり前である。
一時的な支給であるならばそうなる。そして一時金であるならベーシックインカムの意味がない。
私は別にベーシックインカム反対派ではない。むしろ期待している。
日本は現在、時間あたり、ひとりあたりの生産性が低い。
労働は苦痛だけど、食べるために働かなければならない、というモチベーションの低さが影響しているだろう。
ベーシックインカムによるやりたくない仕事はやらなくてよい、という仕事をしている人のモチベーションが向上による生産効率の向上や消費拡大による生産増、更に、世界的に最初のとりくみを導入することによるイノベーションの促進。
正の面を数値化し、負の面も精神論でないと切り捨てず、計算し数値かし、その試算をだしてほしかった。
考察は浅いが、AIやベーシックの入門書として表面を知るためには有益であり、また着眼点が面白い本であった。
- 感想投稿日 : 2021年1月18日
- 読了日 : 2021年1月18日
- 本棚登録日 : 2021年1月18日
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