ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。

著者 :
  • ポプラ社 (2019年5月27日発売)
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本棚登録 : 109
感想 : 8
5

2023年8月現在、著者はまだ生存されているようだ。
岸田奈美氏の本からこの本に興味を持った。

発病からそれをWeb公開するまでの理由、流れがとても納得のいく自然なものだった。
公開前にも問い合わせが膨大だったのは著者の人徳によるものも大きかったのだろう。


親世代の鬱陶しさは本当に共感した。
それに関連してNASAの「直系家族」の定義がとてもいい。
ロケット打ち上げ時に医療チームや支援スタッフがいる、管制塔にある特別室に入れるのはパイロットの
①配偶者
②子ども
③子どもの配偶者
まで。父親、母親、兄、弟、姉、妹は含まれない。
自分で選んだパートナーこそがファミリーの最小単位。

いかに儒教的な価値観に日本が染まっているかを再認識させられた。
延命治療をやりすぎなスパゲッティ症候群というワードは言葉のイメージも相まって痛烈な皮肉として日本人に刺さる。

また、著者は当初看護師のことを医師のサポート役くらいしか思っていなかったそうだ。
だが、親類や友人が「頑張って」という態度なのに対し、看護師は決してそうせず、どれだけの痛みに耐え、恐怖に震え、孤独や絶望と戦っているか理解し、こちらの話を聞いてくれ、病気を前提とした「これから」についてそっと背中を押してくれたそうだ。
著者は命の恩人だと言っており、「医師とはまったく異なる専門性を持った存在」と断言している。

肉体的にも精神的にも文字通り極限状態の人と多数かかわる職業だからこそ、そういう人の感情を理解する、寄り添えるのだろう。
医師とは役割が違う。
しかもその役割は医師にも負けないくらい果てしなく専門性が高いことが理解できた。


<以下心に残った言葉を備忘録として>

セデーション
鎮静剤で意識レベルが下がったまま最期を迎える方法。

人の命は、株式のようなものだ
命は自分一人の持ち物ではない。無責任なことはできない。
でも株式の過半数を持つのは自分

生きるとは、「ありたい自分を選ぶこと」だ。

がんを漢字で書くと「癌」になる。「やまいだれ」に「口が三つ」と「山」を書く。本当の意味は知らないけど周囲からたくさんの口が山ほど押し寄せる病気だとぼくは感じている。

「心配のさきにあるのは自分が安心したいという利己的なもので、相手のことを考えているようで、考えていない」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月10日
読了日 : 2023年8月10日
本棚登録日 : 2023年7月26日

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コメント 2件

shukawabestさんのコメント
2023/08/15

夜分遅くにすみません。shukawabestです。このエッセイ良かったですね。僕も岸田奈美さん経由で幡野さんとこの本を知りました。たぶん、また読み返すと思います。読後感も僕と同じような感じだったのでレビューを読んでいてとてもいい気持ちになりました。
今後もよろしくお願いします。

W_Wさんのコメント
2023/08/16

コメントありがとうございます!
共感できて嬉しいです。
今後もよろしくお願いします!

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