死者の代弁者〈上〉

  • 早川書房 (1990年9月1日発売)
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本棚登録 : 315
感想 : 21
5

ヒューゴー賞とネビュラ賞のダブルクラウンに輝く「エンダーのゲーム」。その続編である本書は、なんとこちらもダブルクラウンに輝くという快挙。エンダーのゲームを読んだのがおよそ6年前だったので、記憶を呼び起こしつつ、読み進めた本書ですが、これがまあおもしろい!2年連続ダブルクラウンは伊達ではありません。

前作「エンダーのゲーム」はいわゆる戦争SFというサブジャンルだったと思いますが、それとは打って変わって、本書はミステリー要素の強い作品。エンダーの万能感が際立ちますが、あまり気にならず。というのも彼の弱いところをしっかり描写しているからなんですね。ヒューマンドラマの巧みさは著者の短篇「無伴奏ソナタ」を読んだときにも感じましたが、SF的な設定もさることながら、ドラマの盛り上げ方の巧さもまたカードの魅力なのかも。

「今はぼくらはあなたを知っています。それがすべての違いを生むんじゃありませんか?キンですら、今ではあなたを憎んでいません。本当にそのひとを知ってしまったら、憎めるもんじゃありません」

物語は終盤でエンダーとオリャードが会話する場面。これはオリャードの発言ですが、前作のエンダーのゲームを踏まえると、とても大切な言葉に思えます。相手を知ること、これは死者の代弁者としても大事な心掛けであり、前作から一貫したテーマなのかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2021年5月20日
読了日 : 2021年4月29日
本棚登録日 : 2021年4月29日

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