三国志や春秋戦国時代をさらに遡り、時代は殷。暴君紂王が悪虐の限りを尽くし、天も人も新たな風を求めた世において、後世にも不滅の光芒をはなつ人物があらわれる。王朝の殺戮から逃れた羌族の少年、太公望がそのひとである。
中国史においては、三国時代や春秋戦国時代が有名で多くの書物やゲームでも題材にされているように思います。実際、私もこれらの時代はいろんな媒体を通じて楽しませてもらっているところですが、私にとってのはじめての中国史は藤崎竜氏の漫画「封神演技」でした。基本はバトルものですが、緻密な構成にギャグ要素もあり、週刊誌に掲載されていたこともあって、子供だった当時は毎週ワクワクしながら読んでいた覚えがあります。主人公の太公望は、策士として時には汚い手も使いますが、とても魅力たっぷり。私にとって太公望とは、この漫画のイメージが強くあるのですが、宮城谷昌光が描く太公望も、これまた素敵な人物。族長として、軍師として、様々な立場で人を導いていく太公望。彼が投げかける言葉はときに物語を飛び越えて、読者の心をうつことがあります。宮城谷昌光の特徴なのかもしれませんが、本書では太公望に限らず、多くの信念を持った人物が登場し、彼ら彼女らの言葉にとても心を揺さぶられました。信念を持って、苦難に立ち向かいながらも正しいことを行うことの大切さを勉強させられました。
個人的に感じている宮城谷昌光のもう一つの特徴は、終盤が尻窄み傾向にあること。本書でもその印象があり、それまでの盛り上げが素晴らしかっただけあり、牧野の戦いも含めた終盤は、もっと膨らませて欲しかったなぁというのが率直な思い。
とはいえ、非常に楽しめた全3巻。引き続き宮城谷昌光の中国史を読んでいこう。
- 感想投稿日 : 2023年6月7日
- 読了日 : 2023年4月18日
- 本棚登録日 : 2023年4月18日
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