ボルヘスはよほど悪漢が好きなのだと思った。倒錯している。
時として、自分の命を大切にしない男たち(たとえば決闘好きなガウチョたち)の間では、不可思議なことが生じる。たとえば、処刑されてさえ、競争で相手に勝ちたいという虚栄心。そうした話を耳にするにつけ、知性の人ボルヘスはきっと、心底ぞくぞくしたのだと思う。
ある意味残酷な書物だ。というのは、本書に収められた短編のほぼすべてが、人の死の前後を扱っているのだから。
ボルヘスが書くことで、人間の一生は(ことばによって安易なむなしい因果関係を与えるがゆえに(知っててわざとか!?)かえってますます、無意味なものとなる。
そして、まだ生きている読者はそれを読んで、ただただ、戦慄するしかない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説・詩
- 感想投稿日 : 2020年3月8日
- 読了日 : 2020年3月8日
- 本棚登録日 : 2020年3月3日
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