ブロディーの報告書 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2012年5月17日発売)
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本棚登録 : 185
感想 : 22
5

ボルヘスはよほど悪漢が好きなのだと思った。倒錯している。

時として、自分の命を大切にしない男たち(たとえば決闘好きなガウチョたち)の間では、不可思議なことが生じる。たとえば、処刑されてさえ、競争で相手に勝ちたいという虚栄心。そうした話を耳にするにつけ、知性の人ボルヘスはきっと、心底ぞくぞくしたのだと思う。

ある意味残酷な書物だ。というのは、本書に収められた短編のほぼすべてが、人の死の前後を扱っているのだから。

ボルヘスが書くことで、人間の一生は(ことばによって安易なむなしい因果関係を与えるがゆえに(知っててわざとか!?)かえってますます、無意味なものとなる。

そして、まだ生きている読者はそれを読んで、ただただ、戦慄するしかない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・詩
感想投稿日 : 2020年3月8日
読了日 : 2020年3月8日
本棚登録日 : 2020年3月3日

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