まず、著者が江藤淳と大江健三郎のダブル評伝を客観的に書こうという意思が毛頭ないところが面白い。その意味で本書は偏見に満ちた一冊なのだけれど、だからこそ、江藤ファンでも大江ファンでもないのに、わけもなく夢中で読んだ。要するに本書は、江藤と大江をある時期に読み込んだ著者自身の私評伝だといってもいい。
本書における江藤淳は、「名誉欲にまみれた天皇礼賛右翼の批評家」、大江健三郎は、「学者にコンプレックスのある、いささかロリコン気味の、勉強家で酒乱の小説家」、として定義されている。
とはいえバカにしているわけではなく、両者に対して多かれ少なかれの敬意があるがゆえに、本書は誠意に満ちた本に思えて仕方がない、その意味で、もっとも客観的な評伝だと思われるのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エトセトラ
- 感想投稿日 : 2018年11月21日
- 読了日 : 2018年11月20日
- 本棚登録日 : 2018年11月20日
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