絵を見る技術 名画の構造を読み解く

著者 :
  • 朝日出版社 (2019年5月2日発売)
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感想 : 205
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フォローしている方が、読んでおすすめされていたので、迷うことなく購入。

先に、『観察力を磨く 名画読解』を読み終えてから、こちらの本を読みました。

立ち位置としては、『絵を見る技術』は、鑑賞そのものにウエイトを置いていて、『観察力を磨く』は、鑑賞を通じて、日常で観察力を発揮するためにはどうするべきか、に重きを置いている印象を受けました。
どちらがよい、悪いという断定は避けますが、あくまで参考程度に。個人的には2冊とも読むことをお勧めします笑。


読み終えた直後は、手品師の種明かしのような驚きで、そういうことだったのか!と。

美術作品の見方の解説をする本は、どうしても偏った見方になってしまう不安があり、正直なところ、今まで抵抗がありました。
しかし、自分の見方を固定するのではなく、あくまでこういう解釈もあるのだな、とプロの視点を学ぶ姿勢をもちつつ、
立ち位置としては、新しい言葉を学ぶような感覚で読んでいくと、ものすごくすんなりと受け入れられると実感しました。

この本では、まずシャーロックホームズの名台詞を引用し、自分がいかに観察していないか、すなわち「見たいように見ている」かを読者に想起させ、視点を養う基礎として、主題(フォーカルポイント)を探すところから始まります。

その後、視線誘導、バランス、色の使い方、構図、そして統一感と続きます。
こうして並べてみると、気難しく感じられますが、内容としては優しく、美術の知識が全くない方でも安心して読み進める構成となっています。

感銘を受けたのは、「色の使い方」の部分です。
色の使い方を、彩度という視点だけではなく、歴史的事実、すなわち画家は薬剤師のように絵具を調合して作っていたこと、青色が貴重な時代があったことなどを知ることで、色一つにおいても、絵画に奥行きを見ることができるのは、なんとも素晴らしいことではありませんか。

とにかく、美術作品を見たいという衝動に駆られます。
この本で紹介されている技術を1つでも断片的に使うことができれば、きっと視界がぐっと広がると思います。

最後に。
著者は、「自分の好き・嫌い」と「作品の客観的な特徴」が分けられると、楽しみ方の幅が広がる、と述べております。
まずは第一印象を感じる。自由な感想が全ての出発点で、そこから観察していく。これは、絵画だけでなく、小説や映画など、他の作品にもいえることではないのでしょうか。
「この構図が良い」だとか、分析的な意見を言えるようになることは魅力的ではありますが、
「眩しいな」と口からこぼれるように出てくる感想も、いつまでも持っていたいものです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月20日
読了日 : 2019年10月19日
本棚登録日 : 2019年9月29日

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