タカラモノ (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2019年6月12日発売)
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親子ってなんだろうか?
主人公の「ほのみ」にとって、ママは、「お母さんという気配を全然身につけていない女の人」だが、ママにとって、ほのみは大人になっても「タカラモノ」だ。
ママは、ほのみが困ったときに、ママなりに励まそうとする。的外れなことを言ったりもするけれど、そんないつも明るく振舞う姿を、ほのみは心のどこかで信頼しているし、だからみんなに好かれている。
言葉は、プラスにもマイナスにもなる。ただ、プラスになることは、自分が元気じゃないと、なかなか言えない。
辛いことがあっても、子供の前でも明るく振る舞うことの大変さは、大人にならないとわからないものだ。
時間が経ってみないと、わからないことは多くて、その瞬間が訪れるたびに、人は成長を実感する。ほのみも大人になって、自分が「プラスのかけら」を集めてできていることに気づいた。
全編を通して、自分の中で特に気に入った、ママの言葉は「相手の思う壺に入ってるのと同じ。ママの壺貸そか?」だ。
「思う壺」は例えだけれども、実際の壺を想像してみると、うわ、やだな。と拒否したくなる。でもそれにはなかなか気づけない。気づけないからこそ相手の思う壺なんだろうと思う。だから、思う壺に入りそうになったら壺を想像する。変な解決策だけど、効果覿面のような気がする。
また、ママのセリフで「素直になったらわかるで。自分のど真ん中に聞くの。」も素敵な表現だと思った。
何かを決めなければならないとき、その後のことをどうしようか考えたり、後になって振り返って後悔しないようについつい考えてしまうもの。だけど、そうじゃなくて今の自分の素直な気持ち、過去や未来じゃなくて、「ど真ん中」にある自分の気持ちに問いかけることが、答えを見つけることなんだと。「現在」ではなく「ど真ん中」という表現を使ったところが、ママらしくていいな、と思った。
本の至る所に落ちていた「プラスのかけら」そのカケラを拾って渡せるような、そんなママのような人間になりたい。だからまずは、自分の周りにあるカケラを集めることから始めようと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年8月3日
読了日 : 2019年7月18日
本棚登録日 : 2019年7月18日

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