「大人である」「大人になる」その一文字の違いには、大きな隔たりがある。
「大人」になるということは、階段を上がるイメージであったが、いざ迎えてみると、緩やかな坂を登るように、気づいたらなっているものに近かった。それは、年齢で区分された大人であって、この本で語られる「大人」ではない。
著者は、『世代や立場が違う人に、その違い踏まえて対応すること(P38)』が「大人」の定義と冒頭で述べている。
そして、「大人になる」ということは、この本によると、人生の主役をやめて脇役に転じ、若者を育てていく側になることらしい。
このあたりが非常に難しい。なぜなら、いま周りにあるものがほとんど、人生の主役になるように促しているからだ。コマーシャルは、「あなたのよりよい生活を」というメッセージが込められていて、流行は常に追いかけるもののように喧伝し続ける。SNSは、まさに主役になれる為のツールとして機能している。
それらが決して悪いわけではない。がしかし、人生の主役、ステージから降りること(降りるという言葉のイメージですらも、ネガティブに感じてしまう)を、なんとか引き留めようとする。
そうして、遅れをとり続けて、気がつけば「年甲斐もなく」と後ろ指を刺される年齢となるのである。
情報化社会・多様性・考え方のアップデート。どれも、魅力的な言葉だ。
しかしながら、大人として成熟するには、全てを変えるのではなく、定期的なメンテナンスをする方にシフトし、主役の座を譲らなくてはならないのかもしれない。
考え方の一つとして、この本はたいへん為になったが、どうしても、主役を譲ることが、今の自分には難しく感じる。こういったところがまだまだ磨き足りないのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2021年7月21日
- 読了日 : 2021年7月11日
- 本棚登録日 : 2021年7月10日
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