死ぬことと見つけたり(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1994年8月30日発売)
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感想 : 76
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未完の書、という事を解説で知る。佐賀藩士、いや、浪人斎藤杢之助の痛快劇。

潔き葉隠の魂が次第に、丁度良い描写における何をやっても上手くいく、ご都合主義的万能型主人公による勧善懲悪ストーリーに転換した気がして、思考が散る。実在せぬものを描くのだから、土台エンタメ的要素が盛られるのは仕方ない事。純粋に楽しめない自分を恥じつつ、自らのバイアスを殺して読む。葉隠ならぬ。

さて、葉隠。葉蔭に奉公を隠す、縁の下の力持ち的な生き様。佐賀藩士の心構えや歴史、習慣に関する知識を集めたものと聞く。ビジネスでは企業理念のほか、少し前にウェイマネジメントとして、ミッションや行動指針のような、先輩たちの言葉とか会社が大事にしてきた事を表す象徴的なエピソード集のようなものが流行った。コンサルまがいの小金稼ぎが、サラリーマン企業の好きそうな仕事のデコレーションをマネタイズ化したような現象だが、葉隠や武士道とは、それの最高峰としての集団心理現象、ミームではないか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年11月13日
読了日 : 2022年11月13日
本棚登録日 : 2022年11月13日

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