勉強の哲学 来たるべきバカのために

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年4月11日発売)
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自分は他者によって構築されたもの。言語を通して、私たちは、他者に乗っ取られている。言葉は人間のリモコンである。畳み掛けるような自己規定法の解説。他人に責められた事などを思い出せば、一瞬、なるほどとも思うが、無言の圧力のような事象を考えれば「言葉」というよりも「他者の存在」そのものが自己の規定を補強するものであり、言葉はそれをスムーズに運ぶ補助的ツールと言える。あくまで、他者や言葉は補助、補強のための因子であり、自我の反応により、自己は形成される。同じ本を読んで育っても、その影響は個々に異なり、自己決定は必ず自我次第。つまり、乗っ取られているのではなく、言語や他者を一成分にしている、という方が正しくはないか。

本著で語られる言葉のコード、アイロニーやユーモアの論理も面白い。仲間内の言葉、専門用語のように言葉にはコードがあると。んー、外国語という存在からして、わざわざ再定義するまでもない自明な話では。日本語か英語か。で、複数言語領域の転換をユーモアと捉えるという主張を援用するなら、結句、あ、それはルー大柴の事よねと、早速、アイロニーが浮かぶ。

千葉雅也。動画で見て面白そうな人だなと思ったが、ユーモアが過ぎて、アイロニーに沈む。ドレスコードならぬ、言葉のコードを纏い、賢さと共に勢いは衰える論。副題さえ、来たるべきバカ、なのか、向かうべきバカなのかと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年7月22日
読了日 : 2023年7月22日
本棚登録日 : 2023年7月22日

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