性と欲望の中国 (文春新書 1217)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年5月20日発売)
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子作りの法的制限、果てはウイグルに対する強制不妊治療。性に対して国家が介入するのは中国だけではなく、日本でも、肉体の一部を映像上はボカしたり、管理売春は禁じられている。禁じなければ、元来、獣として備える本能的な部分、人間は更にそこに発達した頭脳による複雑な性表現が絡み、秩序が保たれなくなるからだ。法の抜け穴から、複雑な性が放たれる。金のため、欲望のため。

中国とは、案外、素直な国だ。権力や金には、平伏し、欲望はきちんと商品化される。経済的に均質化された国は、道徳観も均質化されるため、生きるために性を商品化したり、淫猥な権力にコントロールされる事に、嫌悪感をもつ人が多い。しかし、経済的に均質化されていない場合、生きるために、そうした手段を選ぶ事が正当化される。気持ち悪い成金も、その醜い欲望に身体を預ける商売婦も、許容されたリアリティだ。それが中国の価値観だろうか。この点では、日本のもつ道徳こそファンタジーなのかも知れない。

中国の性に関する、最新事情。安田峰俊の取材はいつもながら、面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年12月12日
読了日 : 2021年12月12日
本棚登録日 : 2021年12月12日

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