綺麗で危うくて痛々しい愛を信じられない恋愛詐欺師蓮と、彼のターゲットとなったお金持ちのお坊ちゃん加賀谷。
孤独で捻くれた男が不器用で真っ直ぐで純粋な思いに解きほぐされていく…というある種王道の展開ですが、蓮の深い孤独、心のひだが丁寧に描かれていく展開が穏やかであたたかい。
人の気持ちに深く寄り添う優しさが溢れていて、蓮と加賀谷、どちらもいとおしくなりました。
本編は130頁程度のボリュームなので展開がやや性急に感じたのが少し残念だったかな?
無事結ばれた後も蓮の抱える根深い痛み、加賀谷の家族との問題、元犯罪者の前科者であるという罪は消える事も無く、世界は二人のために全てに都合がよく優しく回るわけでは無いというシビアさがリアルで突き刺さります。
レストランオーナーとの誤解が解けないままなのはとても辛いのですが、みんながみんな善人なわけでも何もかも受け入れてくれるわけでもないし、人はそう簡単には変われないけれどそれでも生きていくしか無いんだよなぁと。
恋人である加賀谷は勿論、信頼して話が出来る同世代の友人、万里に出会えて良かったね、という気持ちでいっぱい。
詐欺師として偽りの生を生きていた蓮の本名が「透」なのも印象深いです。
家族であり友人であり恋人である、そんな存在になりたいと告げて「透くん」と忌み嫌い逃げ続けてきたその名前を優しく呼んでくれる加賀谷のぬくもりが穏やかで心地よかったです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
BL
- 感想投稿日 : 2015年4月26日
- 読了日 : 2015年4月26日
- 本棚登録日 : 2015年4月26日
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