忘れられた日本人 (岩波文庫 青 164-1)

著者 :
  • 岩波書店 (1984年5月16日発売)
3.99
  • (271)
  • (251)
  • (217)
  • (21)
  • (7)
本棚登録 : 3868
感想 : 286
4

第二次世界大戦後まもなく、対馬や四国、愛知県などの農村/漁村を訪ね、昔の生活を人々に聞いてまわる。
歌を愛し苦労を癒す農民たち、貧しく苦しい生活、夜這いの慣習、ハンセン病を患い差別された旅人との出会い、盲目の乞食、各地の復興を飛び回った大工、心優しい祖父と亀を助けた話、農家の元気な女性たち、
文字を書けない人も多く登場する中で、後半に紹介される二人の文字を知る農民(田中翁、高木翁)の姿には感銘を覚える。農家の立場を誇りに思いながら変わっていく世間への目線を持ち、その村の発展に貢献しようとする。

ここで取材されたのがほんの70年前、というのは不思議な感覚でもある。日本の明治時代からの変化の激しさがわかる。結構近い時代までフリーセックスに近い慣習が多く残っていたというのも驚き。
「昔の人は良く働いた」というのがよくわかる。健康な人がハードに働かないと、立ち行かない時代だったし、それが難しい人は苦しい目にあっていたんだろう、と思う。
この本が出版された1960年頃、すでに”忘れられた日本人”と冠される人たちだった。今ではこのような人たちは絶滅しているだろうか?
人に歴史あり、を強く感じる一冊で、淡々とした語りだけど面白かった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2024年3月20日
読了日 : 2024年3月17日
本棚登録日 : 2024年3月13日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする