ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2019年12月4日発売)
4.08
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本棚登録 : 282
感想 : 31
3

カンボジアを舞台にした本作、時代は21世紀に飛ぶ。
クメール・ルージュ下野後、それでも腐敗と貧困が消えないカンボジア。
ソリヤはNPOを経て、政治の世界に飛び込む、”正しいルール”をカンボジアにもたらすため、権力を手にするべく邁進する。
脳波測定に興味を持つ若者アルン、そしてソリヤの養子のリアス名が学生として大学教授となったムイタックの指導を受ける。
そして脳波を一定程度コントロールするアルンの能力をヒントに、まったく新しいゲームを生み出す。

下巻では土ではなくチャーハンを食いその声を聞くようになった泥、ヘモグロビンに拘り急にキレる精神科医ダラ、不正の暴露に勃起するTVディレクター・カン、など尖ったキャラが登場。
ソリヤの政治を権力への道と、ムイタックの遠回りな思想を植え付ける手法の戦いは、ゲームの世界で邂逅する。

歴史と愚かな政治に翻弄された人々の長い人生の物語。
下巻では脳波と記憶のコントロールというSF的テーマが出てくる、そしてこのストーリーのために、思想の徹底を図ったカンボジアを舞台にしたのか、という納得感はある。
ラストもあまり良いエンドには思えない。あそこまで生に執着した人たちが、、と思ってしまう。
上巻で期待させられたクメール・ルージュ打倒が描かれるわけでもなく、その過激な思想の裏返しに関する50年後のどんでん返し、でもなく、歴史ものとしてもSFとしても消化不良感があると思う。
それでも一気に読み進められるのは、作者の文章力の魅力でしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2024年3月10日
読了日 : 2024年3月10日
本棚登録日 : 2024年3月10日

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