在日

著者 :
  • 講談社 (2004年3月24日発売)
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「在日」という言葉が示す意味。
テレビや雑誌では評論家が我が物顔で「在日」について語る。彼らがどんなキッカケで日本に辿り着き、そして暮らし始めたのか。関連書籍がかなりの数出回っている現代ならばほとんどの人が知っているだろう。
しかし、彼らの本当の苦悩、悲しみを理解することは決してできない。本書を読んだ後でこれだけははっきりと言える。
では、私たちは本書から何を感じ取り学び取るべきなのか?
歴史の重みや差別という怪物について痛いほど伝わってくる。そして、「在日」として生まれたばかりに経験せざるを得なかった痛み。そして、姜尚中という人間の内面的強さ。
ただ、これら以上に、著者がエピローグで述べているように、私たちが感じ取るべきは、「朝鮮戦争の年に生まれて半世紀あまりを経たひとりの「在日」二世が、何を失い、何を獲得しえたのか」ということなのだろう。

著者は本書の中で、ドイツ留学中にインマヌエルという青年と出会う。彼の両親はギリシャ人であり、やはり彼も差別や偏見と戦わざるを得ない運命だった。著者はインマヌエルに「在日」である自らとの共通点を見つけ、そして人生に希望の光が差し込むことになったのだ。
世界中に「在日」がいる。この事実が彼を勇気づけたのだ。ただ、私はそんな現代の世界を変えなければ日本のみならず、世界の平和を導くことは難しいと思う。

ナショナリティ、新興宗教、言語、文化。全てを統一することは勿論不可能。大切なことはどれだけ相手に歩み寄り、共感できるか。これに尽きる。
朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。そして、今でも中東を中心として世界各国で争いは続いている。
専門家たちは口を揃えて言う。「戦争はなくならない」
そして、国の利権だとか領土だとか経済を切り口に評論を始める。テレビを見ている私たちは紛争地域の映像を見て思う。「大変だな。可哀そう」

こんな現状にいつも苛立つ。
何もできない自分の存在にそれ以上に苛立ちを覚える。

ただ、本書を読んで思った。
まずは「知る」ことから始める。知らないことが知っていく。そして、自分の本当の意見に出会う。そこから始める。

姜尚中。誰よりも深く物事を思考する人なんだろう。そして、自分の考えに自信を持つことのできる人。
「在日」である彼の半世からたくさんのことを知り学んだ。

朝鮮半島の平和的統一、また世界全体の平和を心から願う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 図書館貸出・未購入
感想投稿日 : 2011年2月25日
読了日 : 2011年2月25日
本棚登録日 : 2011年2月25日

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