鎖国 上: 日本の悲劇 (岩波文庫 青 144-3)

著者 :
  • 岩波書店 (1982年1月16日発売)
3.75
  • (1)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 48
感想 : 4

1982年刊(初出1950年)。本書の問題意識は、西欧に遅れた日本近代化の要因を近世江戸期の鎖国政策にあるとみて、その政策対応の日欧の差異を分析していく。ただ、上巻は前座で、鎖国論は皆無。すなわち①大航海時代を招来した要因分析のために、西欧の中世後期までの史的展開の解説、②大航海時代(葡とアラブ・印との抗争/西の米大陸侵略)の詳細模様、③近世の前提としての中世後期における日本の実情、④キリスト教の日本布教を解説する。実に詳細。また、西欧史との比較や西欧史料から日本の実像を分析する手法は当時斬新だったはず。
という意味で、全然古びていない。確かに、近世江戸期を、近代と完全に断絶したものと見る解釈は、清国・韓国との比較から見て、古いなという気はする。つまり江戸後期には近代の萌芽が胚胎していたと見ており、著者の見解に諸手を挙げて賛成するわけではない。しかし、江戸期封建制の意味内容を、その前史と西欧史との進展比較から見ようとする方法論は決して古びておらず、むしろ、著者の革新性を物語るものと言えるのではないか。
しかも、詳述されている内容は、個人的には新奇なことかが多い。特に大航海時代の西・葡の侵略、海外進出をここまで書いているのは余りないのではないか、とも感じる。日本の中世後期における著者の一揆論は、個人的に読破書籍がまだまだ多くなく、何とも言い難いが、教科書的な解説を詳細に展開しているようにも思え、収穫ある内容であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月23日
読了日 : 2017年1月23日
本棚登録日 : 2017年1月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする