1998年刊行(本書底本ではないが、各々の初出稿は1931年の文藝春秋)。
著者の新選組三部作完結編は、新選組隊士の「死」が全編を横溢する。東行や甲州鎮撫隊での敗残行、近藤捕縛などの一方、逆に、近藤(土方の可能性も)に詰め腹を切らされた隊士や、あの芹沢鴨暗殺も含まれている。
つまり「死」といえども、新選組の哀切だけが語られるわけではない。
正直なところ
① 愛人と乳繰り合っていた寝込みを襲われた芹沢鴨他、同衾中に殺された反近藤派隊士の素っ裸に対し、著者が「醜い姿」と断じる物言い(SEXしているんだから素っ裸なのは当然)。
② 隊の金を私物化していた近藤。
つまり、近藤が自らの愛妾の身請け金に充てる予定の金員を、下級隊士が一時借用しただけで(勿論、返済は可能だった。とはいえまぁ横領に該当しそうな感じだが)、近藤(ないし土方)が詰め腹を切らせた等、決して下に思い遣りがあるかは疑わしい近藤に対する著者の贔屓目。
③ 鳥羽伏見敗走後、死に場所を求め戦場に立っていたという近藤の悲劇性を称揚するかの如き書き振りは、個人的には座りが悪く感じる。
一方、原田左之助が、上野戦争では戦死せずに日清戦争に参加した噂を載せたり、彼の妻の証言を採ったりなど、流石にトリビアは満載である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2016年12月16日
- 読了日 : 2016年12月16日
- 本棚登録日 : 2016年12月16日
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