ゴルフコースの人魚たち (扶桑社ミステリー ハ 8-5)

  • 扶桑社 (1993年6月1日発売)
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感想 : 2
3

大統領を銃弾から守った男の狂い始めた人生を描いた表題作、偶然に撮った写真から脚光を浴びることとなったカメラマンの変貌「事件の起る場所」、貧しい少年への施しをめぐり、徐々に埋めようのない亀裂が入っていく裕福な若夫婦の話「カチコチ、クリスマスの時計」、死んだペットを次々に剥製にして飾るまでに偏愛する妻の性癖に我慢がならなくなった夫が取った行動とは「狂気の詰め物」など、人間心理の暗部と狂気を鮮やかに描き出した短編11編を収録。

もう1冊のハイスミス短編集「風に吹かれて」よりもダークな味わいの作品が多い。とは言え、通常のホラーやミステリ作品のようなクライマックスやカタルシスは味わえず、急激に終わりを告げられた物語を前に、読者は半ば宙ぶらりんの気分、なんとも言えない「不協和音のような読後感」を味わうこととなる。その余韻の中に虚無感、ある種の残酷さ、恐怖が仕込まれているようにも感じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ホラー/怪奇幻想
感想投稿日 : 2010年4月17日
読了日 : 2010年4月17日
本棚登録日 : 2010年4月17日

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