・「家族はいない」
「もともといないのか、それともいるけどいないのか」
「いるけどいない」
・「マダムのところで金魚を見ていて、私も急に金魚がほしくなったの。こういうのがうちにいるといいかもしれないって思った。小さくて無口で、要求も少なそうだし。それで明くる日に駅前のショップに買いに行ったんだけど、実際に水槽に入っている金魚を見ていたら、突然ほしくなくなった。そして売れ残っている貧相なゴムの木を買ったの。金魚のかわりに」
・「空白が生まれれば、何かがやってきて埋めなくてはならない。みんなそうしておるわけだから」
「みんなそうしている?」
「そのとおり」と父は断言した。
「あなたはどんな空白を埋めているんですか?」
・「説明しなくてはそれがわからんというのは、つまりどれだけ説明してもわからんということだ」
・「アンゼンなところなんてない」
・「心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しない」
・彼女は大声で笑い出したくもあったし、同時に泣き出したくもあった。しかしそのどちらもできなかった。彼女はその中間に立ちすくんだまま、どちらにも重心を移せず、ただ言葉を失っていた」
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本
- 感想投稿日 : 2016年11月14日
- 読了日 : 2012年5月24日
- 本棚登録日 : 2012年5月24日
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