おそらく、今までに読んだミステリのなかで一番好きな作品だと思う。なにが好きかといえば、トリックでも全体のストーリーでもない。私の心をとらえたのはひとえに、犯人の動機だ。なぜ、その犯人が最初の殺人に至ったのかというその動機に尽きる。彼は、彼女に愛されていた。そして、彼女は彼を必ず手に入れるといった。彼はそれを恐怖した。彼にはほかに好きな女性がいた。それでも、そう断言した彼女に惹かれていく自分がいた。それに彼は畏怖を覚えた。そして、彼は彼女を殺した。この動機こそ、この作品を愛する理由だ。また、途中、日想観を思い起こさせる補陀落渡海などの夕焼け信仰への解釈が差しはさまれ、それが犯人を殺人へと駆り立てた状況を演出しているという部分も興味深かった。全編を通し夕焼け、夕焼け色がキーワードとなっている。すべてを朱く染める夕焼けはたしかに畏怖を煽り、神秘を感じさせる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2011年11月20日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年11月20日
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コメント 1件
jardin de luneさんのコメント
2012/06/12