塩狩峠 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1973年5月29日発売)
3.89
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本棚登録 : 10790
感想 : 1222
5

「なんという本を読んでしまったんだろう」という、三浦綾子さんの著作に共通する読後の感覚。しばらく呆然としてしまうような、体の内部に重りが入ったようなズンとした感覚。小説というものの力をまざまざと見せつけられるようで、素晴らしかった。
50年以上も前に出版された話とは思えないほど、今を生きる人にも響く話だと思う。(文中に出てくる言葉で、現代ではあまり聞かず知らないものがたまにあり、そこは調べながら読んだ。)

生きるとは何か、愛とは、罪とは、犠牲とは、、、著者のキリスト教の考え方に深く根をはりながらも、信仰関係なく敬服してしまうような展開と人物描写だった。
「氷点」シリーズを読んでいたのでなんとなく予想はしていたけど、終わりにかけてようやく信夫とふじ子が幸せになるのかな、と思った矢先の不幸には泣いた。
信者が皆、穏やかで光り輝くような表情で書かれていたのが印象的。

あとがきを呼んで、主人公の元となり塩狩峠で殉職した人物が本当にいるのには驚き。明治42年の出来事だそう。
何かのエッセイで出てきてメモしていた本だったので、教えてくれたその方に感謝したい(どなたか分からなくなってしまったけど)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月5日
読了日 : 2021年8月5日
本棚登録日 : 2021年8月4日

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