日本の詩人・金子光晴の、パリに滞在していた頃の自伝的エッセイ。
語られる出来事はどれも凄まじく、外地で貧窮することの酷さ、寒々しさを痛切に感じさせました。
パリでの仕事もほとんどその日暮らしのものばかり。
日本人学生の論文を代筆したり、新興宗教団体に絵を描いて買い取ってもらったり・・・。貧困に喘いでいる日本人の芸術家を救うのだと、詐欺まがいの方法で日本大使館からお金をせしめてもいます。
もちろん、出会うのは日本人ばかりではありません。
金子の妻を口説こうとするフランス紳士や、絵を高額で貴族連に売りつけようとする似非貴婦人などなど・・・。
詩人が出会うパリは"芸術の都"などではなく、"虚栄と絶望の都"といったほうが妥当かもしれません。
このような極貧生活に耐えた著者の精神はもちろん強靭だと思いますが、筆致は繊細、これほどの特異な体験を共感できるように描きだす文章はさすがです。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年8月14日
- 読了日 : 2013年8月14日
- 本棚登録日 : 2013年8月14日
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