人間失格

著者 :
  • 青空文庫 (1999年1月1日発売)
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感想 : 44
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太宰治の代表作ともいえる「人間失格」について自分なりにレビューとしてまとめてみました。以下、作品についてのネタバレがありますのでまだ読まれてない方はご注意ください。
第一の手記において「恥の多い生涯を送ってきました。」この一言から始まることで何かネガティブな雰囲気を感じとりました。太宰治は波瀾万丈な人生を送ったことを、彼について調べた時に十分にわかりましたが、どのような内容が待っているのだろうとドキドキしました。
小さな頃から誰にも本音を言わずに道化師のように、全てを見透かしているようなどこか子どもらしくない様子をみてこの人には小さな頃から特別な能力があったのだろうと思いました。学校ではわざと自分を戯けて見せて友達の笑いを誘ってみたり、それは友達だけに過ぎず、家族にさえ本来の自分を見せることなく思ったことを口にできなかったり、お父さんの東京のお土産の話からも分かるように、彼は父の機嫌を伺って何か間違いを犯せばすぐに自分でそれをカバーしたりしていて、とても普通の子どもではできないようなことをこの人はしていました。そんな中、太宰は竹一に出会ったのでした。彼もまた他のクラスメートとは違う、太宰がわざとした失敗に気づくような人でした。目立つようなタイプでない竹一から「ワザ。ワザ」と見破られた太宰は震撼しました。「自分は世界が一瞬にして地獄の業火に包まれて燃え上るのを眼前に見るような心地がして、わあっ!と叫んで発狂しそうな気配を必死の力で抑えました。」と言うほどです。自分が作り上げてきた偽の自分が竹一にバレてしまったこと、またそれをクラスメートにばらされてしまうことが不安でしょうがなくてそれだけ恐れていたのです。でもそれは、唯一太宰が素の自分でいられる相手でもあったのです。竹一の家に行って話をしたり、太宰の珍しく子どもらしい場面を見ることもできます。また、竹一による予言にも振り回されることになるのです。その予言の通りと言ってもいいのでしょうか、太宰は様々な女性に惚れられたりしたのです。その中でも太宰が初めて恋したツネ子と一緒に自殺を図りましたが、自分だけ助かってしまったことを相当悔やんだことと思います。この後も、ヨシ子という女性と暮らしたり、その中でも様々な葛藤や病気など苦しいことばかりある太宰ですが、これはこの作品を読んだ私の推測にすぎませんが、彼は誰かに心から愛してもらい、自分も心から愛することを望んでいたのではないかと感じました。全体的に暗い内容の作品ですが、その中でも彼の生い立ちや苦しみを知ることができました。テンポも良く、さすが太宰治だなぁと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月31日
読了日 : 2021年7月21日
本棚登録日 : 2021年7月21日

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