夢見る帝国図書館 (文春文庫 な 68-4)

著者 :
  • 文藝春秋 (2022年5月10日発売)
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国際子ども図書館はなじみの図書館なので今に至るまでの歴史を物語の中で感じることができ新鮮でした。
2重構造になっていることで時代を追う描写に奥行きが生まれ、ぐっと入り込む感覚、時代に翻弄されたのは人だけではなく本も同じであり、もし、彼らに命が吹き込まれていたならば私たち人間が語ることができないほど様々な情景を目にしてきたことであろうと思いました。


みなさんは国立国会図書館に行ったことはありますか。国会図書館は日本で出版されたあらゆる書物を閲覧することができる国家施設です。では、国会図書館はいつからあるのでしょうか。その創設の歴史を描いた物語が、中島京子さんの『夢見る帝国図書館』(913.6-ナ 文藝春秋)です。明治時代、日本は西洋諸国にならい、近代国家への道を歩み始めます。力を持つ国の多くは国内に大きな図書館を持ち、そこにその国のすべてが集まっていました。書物は国の宝。本作は国の宝を守るべき城・国会図書館を主人公とした小説を書きたいという夢を託される主人公の物語部に、主人公による国会図書館とそこに通う人びとの交流を描いた小説が入れ子型になった作品です。国会図書館が帝国図書館として上野にあった時代、足繁く通う樋口一葉に図書館があわい恋心を抱いていたとか、戦時中に、上野動物園の動物たちによる叫びを聞いていたとか、図書館が口を持っていれば私たちに何を語ってくれるのか想像しながら読むととても興味深かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月16日
読了日 : 2022年7月14日
本棚登録日 : 2022年7月14日

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