人間不平等起源論 (光文社古典新訳文庫 Bル 1-1)

  • 光文社 (2008年8月7日発売)
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自然法(ドロワ・ナチュレル)という考えは、人間の本性にかかわる概念である。p38

【二つの原理ー自己愛と憐れみの情】p41-43
学問的な書物はどれも、すでにできあがった状態の人間について理解するために役立つだけであり、ここでは無用のものである。それよりも大切なことは、人間の魂の原初的でもっとも素朴な働きについて考察してみると、理性に先立つ二つの原理を見分けることができるということである。一つの原理は、わたしたちにみずからの幸福と自己保存への強い関心をもたせるものである。もう一つの原理は、感情をもったあらゆる存在、とくに同類である他の人間たちが死んだり、苦しんだりするのをみることに、自然な反感を覚えることである。
わたしたちの精神は、この二つの原理を調和させ、組み合わせることができるのであり、そこから自然法(ドロワ・ナチュレル)のすべての規則を導きだせる。ここに必ずしも社会性(ソシアビリテ)の原理を導入する必要はないのである。
<中略>このように、原初の人間(オム・オリジネル)、その真の欲求、その義務の基本的な原則について研究するというこの方法は、道徳的な不平等の起源について、政治体の真の土台について、政治体の成員の相互の権利についてなど、重要でありながら、十分な解明が行われていない多くの問題を考察するときに発生する無数の難問を解決するために役立つ唯一の有効な手段なのである。

「人間の不平等の期限はどのようなものか。それは自然法(ロワ・ナチュレル)のもとで認可されるものか」p48

【二種類の不平等】p49-50
わたしは人類には二種類の不平等があると考えている。一つは自然の不平等、または身体的な不平等と呼びたいものである。これは自然が定めたものであり、年齢、健康状態、体力、精神の質、魂の質の違いによって生まれる。もう一つは社会的(モラル)または政治的な不平等と呼びたいものである。というのも、この不平等はある種の取り決めによって生まれるものであり、人々の同意によって確立されるか、少なくとも認可されるものだからである。この種の不平等はさまざまな特権から生まれるもので、一部の人々が他の人々を犠牲にして、この特権を享受する。たとえば他の人々よりも豊かであるとか、尊敬されているとか、権力をもっているとか、何らかの方法で他の人々を服従させているとかである。

第二部は【所有という観念の発生】から始まる。p123

【約束と共同体の成立】p128
【私有財産の発生】p131
【自尊心の誕生】p135
【所有権の誕生】p143
【社会と法律の起源】p150
【自由は放棄できない】p161
【社会契約】p169
【不平等の激化】p176

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治思想・哲学/正義論
感想投稿日 : 2018年2月9日
読了日 : 2018年2月27日
本棚登録日 : 2012年6月22日

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