たった一言で人を動かす 最高の話し方

著者 :
  • KADOKAWA (2017年11月16日発売)
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元NHKのアナウンサーである著者が、自身の考える最高の話し方について語る一冊。
読む前は、正しい読み方、言葉の選び方・使い方、キラーフレーズ、ジェスチャーといった、アナウンサー時代の経験を基にしたノウハウ本のイメージでした。しかし、上司から教わった「伝えるから、伝わる」という言葉を考え、話し方を正しくするだけではダメで、しっかりと伝わるための方法として「間」の取り方に注目したそうです。
これまで、いろいろな話し方をテーマにした著書があったと思いますが、「間」の取り方のみにフォーカスした内容は、驚きとともに新鮮でもあります。
著名人のスピーチから、間の取り方を解説し、その使い方、効果、実践という内容は、シンプルであるがゆえに、試したくなり、一方でその難しさも感じさせます。この内容の一点に絞ったという意味では秀逸だと思います。とはいえ、内容が単調だと感じる点もあり、評価が難しい一冊といえるかもしれません。
文末に、 「これまでの人生で何を大切にして生きてきたか? いま、何を大切にして生きているか? この答えを見つけることで、「最高の話し方」に変わる」という問いかけがありますが、唐突感があるので、著者の別の書籍と合わせて読むことで、著者が本当に伝えたかったことがより理解できるようになるのではないでしょうか。



▼「伝えるから、伝わる」-「正しい話し方」だけではうまく相手に伝わらない。聞き手の心を動かす「最高の話し方」をしたいのであれば、「話すスキル」だけではなく、「伝えるスキル」も必要

▼今までの話し方を「最高の話し方」に変えるエッセンスが「間」
・「間」:話していない余白。無言で何かを伝える時間

▼「自称コミュニケーション上手」の困った特徴
・話が長い
・一文が長い
・相槌が多い
・人の話を遮る
・相手の話をうばう
・会話がかみあわない

▼「間」とは
・聞き手への思いやり
・外国語に訳せない日本独特の概念
 比較文学者 剣持武彦氏「日本人にあっては『間』という概念が、空白な状態とか、あるべきものが欠落した状況をいうのではなく、むしろ、積極的に創造されたものとしての『間』である」
・「間」はとるものではなく、意図的につくるもの。聞き手の反応を見ながら「間」をとるのではなく、「聞き手に反応してもらいたい場面」で、積極的に自分から「間」をつくる

▼デール・カーネギー 人前で話すときのポイント
①重要な言葉を強調し、重要ではない言葉を軽く言う
②声の調子を変える
③話す速度を変える
④重要なポイントに前後に「間」を置く

▼ザッカーバーグのハーバード大卒業式のスピーチにみる7つの間
①始まりと締めくくりの「間」
 利き手の拍手や笑いなどの反応には「間」をとって待つ
②話の転換の「間」
 聞き手は話の整理ができるので、わかりやすくなる
③強調の「間」
 その言葉を聞き手の胸に深く刻むという効果
④考えさせる「間」
 疑問形で投げかけて「間」をとることで、話を自分事にでき共感がうまれる
⑤人を感動させる「間」
 「間」→拍手というリズムがができると会場の一体感が高まる
⑥聞き手を味方にする「間」
 観客を誰かを紹介すことで、観客同士の距離感が一気に縮まる演出
⑦余韻の「間」
 最後の締めの言葉の前に「間」をとることで、話が完結し余韻が残る

▼長さによって使い分ける3つの「間」
①ショートの「間」(長さ1、2秒)
 商談など1対1で話しているときや、大勢の前でのスピーチでも一人一人に聞かせたいときなどに効果的
②スタンダードの「間」(長さ3秒以上)
 相手に考えさせて言葉の意味が浸透するには3秒以上かかる。聞き手の思考を深め、動かす力が強い
 謝罪する、叱る、褒める、励ます、感謝するといった、感情を伴う場面に適している
③ロングの「間」(長さ5秒以上)
 聞き手の注目を集める。1対1の場面よりも1対大勢で話す場にふさわしい

▼「間」のつくり方・初級編~行動をはさむ5つの方法~
①資料を使う
②水を飲む
③ホワイトボードに書く
④物を出す
⑤歩く
▼「間」のつくり方・上級編~無言で待つ~

▼「間」を計る3つの方法
「間の3倍と3分の1の法則」(話し手には3倍の長さに、聞き手には3分の1の長さに感じられる)
①やまびこ法(直前に発した言葉を心の中で繰り返す)
②呼吸法(自分の呼吸を数える)
③リアクション法(聞き手のリアクションを使う)

▼一文一息=一文(ワンセンテンス)を一息で、息継ぎせずに話すこと。「間」をつくるために最適な話し方
 聞き手にわかりやすく、力強く伝えるには、一文をなるべく短くして一息で話すスキルが必須
①一文を50文字以内にする
②PREP法で構成する
③文末の「思います」は削除する
④一文ごとに息継ぎをする
⑤動画を撮影し、10項目を確認する
 (話の内容、PREP法になっているか、「一文一息」になっているか、声の大きさ、話すスピード、「間」の取り方、話の内容にふさわしい態度か、目線の配り方、身振り手振り、姿勢)

▼困った相手を「間」でコントロールする
①話が長い人
 話の切れ目、意味の切れ目を待つのはやめて、相手の息が切れるのを待つ
②早口の人
 息を合わせて話に割って入っていくと、相手はそこで呼吸を整えることができ、話すペースを落とすことができる
③無口な人
 「待ってますよ」という非言語・ノンバーバルの表現をしながら、自分が思っているよりも3倍長く待つくらいの気持ちでいたら、相手も話し始める可能性が高い
④口が重い人
 言おうかどうか迷っている状況だと想像して、まずは時間をかけて待つことが肝心
⑤話がずれる人
 タイトルに戻すというのが鉄則

▼イギリスの歴史家 トマス・カーライル「沈黙は口論よりも雄弁である」
 「間」は無言ではない
 言葉にできない「間」にこそ、心の声がこめられている

▼話すことは、生きること

 これまでの人生で何を大切にして生きてきたか?
 いま、何を大切にして生きているか?
 この答えを見つけることで、「最高の話し方」に変わる


<この本から得られた気づきとアクション>
・話す内容にこだわるよりも、伝わる話し方にこだわってみよう。
・意識的に「間」をとるようにし、聞き手の反応に注意を払う。

<目次>
1章 なぜ、あなたの話し方は相手に伝わらないのか?
2章 「間」をとれば「最高の話し方」になる
3章 世界の一流に学ぶ「最高の話し方」
4章 人を動かせる「間」のコントロール法
5章 「間」をつくりだす最高の伝え方、「一文一息」
6章 「間」を使った最高の聴き方
7章 「最高の話し方」のためのメンタル

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月29日
読了日 : 2020年8月27日
本棚登録日 : 2020年8月25日

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