草の花 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1956年3月13日発売)
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本棚登録 : 2367
感想 : 275
3

福永武彦自身の体験がもとになった私小説の雰囲気漂う、著者の中では数少ない作品の一つである。主人公の汐見の純粋すぎるがゆえに、後輩の藤木やその妹の千枝子との恋愛感情をこじらせている様は、非常に胸が痛んだ。ひねくれた性格によってこじらせる場合もあるが、純粋すぎる性格によってこじらせる場合もあることをこの作品で認識することができた。
自分はここまでの純粋な気持ちを持っていないので、なぜここまで汐見が戦争や孤独、恋愛に対して深く考え、潔癖であろうとするのか、理解に苦しむ部分もあった。戦中の時代だからこその感情なのかもしれないが、当時の若者とは少し違う感性、考え方を持っているがために、自分を苦しめてしまっているのだろうか。そうなのではないかと思いながら読み進めていたため、自分も辛くなってしまう場面がいくつかあった。ここまでの長文を手記として綴った汐見の文章力には脱帽である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 福永武彦
感想投稿日 : 2024年3月4日
読了日 : 2024年2月29日
本棚登録日 : 2024年2月24日

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