桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2012年4月20日発売)
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男子バレーボール部のキャプテン桐島が部活を辞めたことで、5人の17歳の高校生の日常に少しずつ影響を与えていく物語。登場人物が抱えているそれぞれの想いや悩み、葛藤、心情がリアルに描かれている。スクールカーストはいつの時代も重苦しくやっかいだ。7つの物語それぞれで主人公は違うが、別の話の中にも出てくることがあり物語同士の繋がりがあっておもしろかった。個人的には「菊池宏樹」の物語が好きで、
「大丈夫、お前はやり直せるよ。と、桐島に言ってやろう。お前は俺と違って、本気で立ち向かえるものに今まで立ち向かってきたんだから、そんなちっさなことで手放してしまったらもったいない、って、言ってやろう。
という文章がよかった。

心に残った言葉
・「恋っていう文字には下に心があるから下心。愛は真ん中にあるから真心なんよ」(志乃)
・高校って、生徒がランク付けされる。なぜか、それは全員の意見が一致する。
・大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部。
・自分は誰より「上」で、誰より「下」で、っていうのは、クラスに入った瞬間になぜだかわかる。
・僕らは気づかない振りをするのが得意だ。
・自分達が傷つきそうなことには近づかない。
・ひとりじゃない空間を作って、それをキープしたままでないと、教室っていうものは息苦しくて仕方がない。
・僕らには心から好きなものがある。それを語り合うときには、かっこいい制服の着方だって体育のサッカーだって女子のバカにした笑い声だって全て消えて、世界が色を持つ。(前田涼也)
・くだらないかもしれないけど、女子にとってグループは世界だ。目立つグループにはいれば、目立つ男子とも仲良くなれるし、様々な場面でみじめな思いをしないですむ。
・どこのグループに属しているかで、自分の立ち位置が決まるのだ。
・だけど、時々、なぜだか無性に、どんな子でもいいからたったひとりだけの親友が欲しいと思うときがある。笑いたくないときは笑わなくてもいいような、思ってもないことを言わなくてもいいような、そんな当たり前のことを普通にできる親友が欲しいと思うときがある。私たちは、そんな気持ちを隠すように髪の毛を染めたり爪を磨いたりスカートをみじかくして、面白くもないことを大声で笑い飛ばす。(宮部実果)
・俺達はまだ十七歳で、これからなんでもやりたいことができる。希望も夢もなんでも持っている、なんて言われるけれど本当は違う。これからなんでも手に入れられる可能性のあるてのひらかあるってだけで、今は空っぽなんだ。
・ダサいかダサくないかでとりあえず人をふるいにかけて、ランク付けして、目立ったモン勝ちで、そういうふうにしか考えられないんだろう。
・一番怖かった。
・本気でやって、何もできない自分を知ることが。
                (菊池宏樹)
・「友未が言ってくれたんやん、おいしいんやし、好きなんやから、食べればいいやんって。私、誰かが好きやからって、ヨーグルト食べたりするわけやないもん。自分が好きやから、食べるんやもん」(東原かすみ)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月7日
読了日 : 2023年10月7日
本棚登録日 : 2023年10月7日

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