道尾秀介さん、初読み。一番目に読むならこの本と何となく決めていた本。正解だった!
ヤミ金組織に酷い目にあわされた過去をもつ中年男性のタケさんテツさん。二人は共に詐欺師に身を落として暮らしている。ひょんな事から他に三人と猫一匹が転がり込んでくる。やひろ、まひろの姉妹と、やひろの彼氏(売れないマジシャン)の貫太郎、猫のトサカとの奇妙な同居生活が始まる。心に闇や悩みを各々抱えていながらも穏やかに淡々と暮らしていくのだが、しつこい追手は迫ってくる。もう我慢したり逃げたりしないで得意技を使ってみんなで復讐しようと計画(アルバトロス作戦)を企てて普通の真面目な生活を取り戻そうとするストーリー。
辛くて重い過去に苦しめられている内容であっても暗くなりすぎずに進むのは、いくつもの可笑しなペテン話や、軽快な掛け合い台詞があってのもので、テンポ良く読みやすかった。
途中、テツさんが話す「指の話」もタイトルの意味もあって印象的に残る。また、
「他人のような家族だっているんだから家族のような他人だって良いだろ!」も心に沁みる。
それから五人に増えて住むことに反対するテツさんをタケさんが説得する話「原始人との落とし穴の話」も、ちょっと、ん?となるような訳わからない話であってクスッとできるスパイスとなっている。
売れないマジシャンである貫太郎の話で、『理想的な詐欺と理想的なマジックの違いの話』も興味深い。
重すぎる過去に苦しんだり理不尽な境遇を背負ったり背負わされたりする男達と少女達は、どこか憎めない優しい人達でなんとも良いキャラクター揃い。
そして絶妙な伏線のなかに訳がわからないうちに引き込まれて絶妙なラストを迎えるどんでん返しが、とても良かった~
ちょっと切なさもあるけれど、清々しく優しくほっこりさせてくれるどんでん返しのミステリ―ってあるんだなぁ~と知った。
いい話だった―!
- 感想投稿日 : 2023年2月17日
- 読了日 : 2023年2月17日
- 本棚登録日 : 2022年6月7日
みんなの感想をみる