新書514 ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2015年5月13日発売)
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朝日新聞に2011年から2015年まで月1回連載された「論壇時評」を新書化したもの。
「時評」という言葉を辞書で調べたら、2つの意味が書かれていた。(1)当時の世間の評判(2)世の中に起こっているさまざまな出来事についてする評論。ここで用いられているのは、(2)の方の意味であろう。また、ついでに「論壇」の意味も辞書で調べると、同じく2つの意味が書かれていた。(1)意見を論じ述べる壇。議論を戦わせる場所(2)議論を戦わす人々の社会。評論家の社会。言論界。ここで用いられているのは、やはり(2)の方の意味であろう。本連載は月1回のものだったので、連載前1ヶ月の間に論壇に発表された色々な意見に対しての評論、というのが「論壇時評」という題名が表す意味だと理解した。
原発やTPP、その他、多くのことがテーマとなっているが、本書は、そういったことに対しての「高橋源一郎の意見」が直接的に語られている訳ではなく、そういったテーマに関して、前1ヶ月に論壇で発表された意見に対しての論評という形で、高橋源一郎の意見が、間接的に示されている。かつ、1回あたりの分量が、論評の対象の出所データを含めて新書で5ページ。出所にたいてい、だいたい1ページ使われているので、論評自体は新書で4ページという短いものである。そういうこともあり、私の、本書を読んでみての最初の感想は、よく分からない、というものであった。
TPPに関して論じた(正確に言えば、TPPについて書かれた記事に関して論じた)、「"憐みの海"を目指して」という題名での回がある。そこで、高橋源一郎は、TPPに反対する多くの論者の意見に賛意を示し、あるいは、感銘を受けたりする。更に、最後の切り札的に、エマニュエル・トッドの「自由貿易と民主主義は長期的に両立しません」という言葉を引用する。高橋源一郎自身が、TPPに反対していることは、これを読むと分かるし、なぜ、反対しているのかも、ある程度分かる。しかし、ここでは、TPPについてのメリットやデメリットが総合的に論じられている訳ではないので、読者は、「高橋源一郎はTPPに反対している」という事実のみしか、あるいは、「TPPには皆さんも当然反対と思いますが、私も反対ですし、この1ヶ月の論壇でも、このような反対意見がありました」という紹介しか、この回の記事からは読み取れないのだ。
私自身は、そのような評論は、無理があると思うし、第一、面白くも何ともないと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月1日
読了日 : 2022年1月1日
本棚登録日 : 2022年1月1日

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