米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)

著者 :
  • 集英社 (2007年8月17日発売)
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感想 : 107
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米原万里の4つの講演での講演録。高校生向けの講演が2つと、愛知県主催の講演、神奈川新聞社主催の講演。後者2つが米原さんが職業としていた通訳に関してのもの。後者2つの講演の方が前者2つの高校生向けの講演よりもずっと面白い。それは、同時通訳という、普通の人間があまり知ることのない世界の職業的専門性について、ご自身の経験をもとに話をされているから。前者2つに比べて、経験に裏付けられた、圧倒的に地に足のついた内容だからだと思う。
私の妻はタイ人で、かつ、日本語がほとんど出来ない。会話はタイ語で行うが、困るのは、私の知り合いの日本人と会話をするとき。妻はタイ料理をつくってふるまうのが好きなので、これまで多くの知り合いに私の家に来てもらって一緒に食事をした。その時の会話の通訳は私の仕事になる。私のタイ語はとても流暢とは言えないレベルではあるが、辞書を使いながらではあるが、一応、何とか会話がつながる程度の通訳の役割は果たせている。それは逐語訳を諦めているから出来ているのではないかと思う。双方の言いたいことが何で、タイ語に訳す場合には、それを出来るだけ簡単な単語に(簡単な単語しか知らないから)する必要がある。それが何とかうまく機能しているのだと思う。
本書の中で米原さんがプロの通訳も限られた時間の中で、時には話を端折りながら「意味を通じさせる」「コミュニケーションを成立させる」ことに集中するのだという意味のことを書かれていて、私の方法も、あながち間違っているわけでもなかったな、と心強く感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年8月14日
読了日 : 2021年8月14日
本棚登録日 : 2021年8月14日

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