いねむり先生 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2013年8月21日発売)
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感想 : 49
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本書の題名の「いねむり先生」とは、色川武大(阿佐田哲也)のことである。妻である夏目雅子を亡くした主人公である伊集院静は、自暴自棄的な生活を送っていた。その時に知人から紹介されたのが、「いねむり先生」である色川武大だ。先生との付き合いを通じて、伊集院静立ち直ってゆく。
小説は、伊集院静が妻を亡くして2年後くらいから始まり、色川武大が亡くなって1年後に終わる。夏目雅子がなくなったのは1985年のことなので、小説の始まりは1987年頃のことであり、日本がバブル景気に向かおうとしていた時代だ。色川武大が亡くなったのは、1989年のことなので小説の終わりは1990年のこと。バブルの絶頂期のことである。伊集院静は1950年生まれなので、小説は、伊集院静が37歳から40歳までのこと。本書中に暗示されているが、この後、伊集院静は小説を書くことを再開し、現在のような高い評価を受ける小説家となる。また、この小説は小説すばるの2009年8月号から2011年1月号まで連載され、単行本として発行されたのが2011年4月のことであり、それは、色川武大が亡くなってから、20年以上の時を経てのことであった。
文庫本で400ページを超える、比較的長い小説である。多くの人に慕われ、好かれた色川武大について、また、色川武大の影響を受けて、伊集院静が少しずつまともになっていく様が書かれている。伊集院静が色川武大のことが好きであり、また、大きな感謝の気持ちを持っていることが400ページを使って表されている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月19日
読了日 : 2021年12月19日
本棚登録日 : 2021年12月16日

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