表題作「パルタイ」を含む5編の短編から成る短編集。ここでは、表題作の「パルタイ」にのみ触れる。
文庫本の裏表紙に、「パルタイ」のあらすじが、下記のように記載されている。
「革命党」に所属している「あなた」から入党をすすめられ、手続きのための「経歴書」を作成し、それが受理されると同時にパルタイから出るための手続きを、またはじめようと決心するまでの経過を、女子学生の目を通して描いた。
この短編は、倉橋由美子のデビュー作である。
明治大学在学中に大学の学長賞に本作で応募し、入選したもの。選者の文芸時評での推薦により話題となり、「文學界」に転載され、また、芥川賞候補となった作品。書かれたのは、1959年。「文學界」に転載されたのは、すなわち、倉橋由美子の文壇デビューとなったのは、1960年のことである。
小熊正二の「1968」を読んでから、当時の(あるいは、前後の)学生運動を扱った小説をいくつか読んでいる。三田誠広の「僕って何」や、島田雅彦の「優しいサヨクのための嬉遊曲」である。その流れで、本書も手にとったもの。
「パルタイ」とは、党・政党・党派の意味で、特に共産党を指して用いられた言葉であるらしい。この物語が書かれた当時、「パルタイ=党」といえば、日本共産党を指していたということであり、パルタイへの入党手続(あるいは、これからの退党手続)とは、日本共産党へのそれを指していたのだ。しかし、この物語は、政治的な問題を主題にしたものではないし、日本共産党に対して何らかの意思(賛同とか批判)を表明することを主題にしたものでもないと私は理解した。せっかく入党が認められたのに退党手続をすぐにとろうとするのは、もちろん、その党(日本共産党)に対して批判的な言動ではあるが、その批判の理路を物語にするというよりは、むしろ、もっと、主人公の女子学生の内面の変化(それが何であれ)を描いたもののように感じた。
- 感想投稿日 : 2023年4月2日
- 読了日 : 2023年4月2日
- 本棚登録日 : 2023年4月2日
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