石坂泰三の世界 もう、きみには頼まない (文春文庫 し 2-23)

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  • 文藝春秋 (1998年6月10日発売)
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石坂泰三の伝記。石坂泰三は、戦前・戦後にかけて活躍した経済人である。その主な経歴を記すと以下の通りだ。
1886年 誕生。1886年は明治19年
1911年 東京帝国大学卒業→逓信省入省
1915年 逓信省を退官し第一生命に入社
1938年 第一生命社長就任(52歳)
1947年 第一生命社長辞任(61歳)
1948年 東芝取締役就任(62歳)
1949年 東芝社長就任(63歳)
1956年 経団連会長就任(70歳)
1965年 日本万国博覧会協会会長就任(79歳)
1968年 経団連会長退任(82歳)
1975年 逝去(88歳)

石坂泰三の活躍は、東芝社長時代の労働争議対応、12年に渡る経団連会長としてのもの、大阪万博を成功に導いた万博協会長時代のもの等が知られているが、一目で分かる通り、かなり歳をとってからの功績である。第一生命社長を退いてからしばらくは、いわゆる「浪人時代」があり、縁あって東芝の取締役・社長に就かなければ、そのまま終わっていた可能性もあり、典型的な大器晩成型のキャリアである。
また、石坂泰三のもう一つの特徴と思えるところは、トップになってその実力を発揮するという部分だ。東芝には社外役員として関わり、その後にトップに就いている。経団連、万博協会長には、初めからトップとして(あるいはトップ候補として)関わりを持っている。日本の企業トップで有名な方は、創業社長あるいは内部昇格された方が多い中で、やや異質な特徴を持っていたのではないかと感じた。

城山三郎の作であり、取材は行き届いているし、また、物語の構成も文句なく、楽しく読んだが、私としては、「何故高齢になって活躍できたのか」「何故トップとして、より力を発揮したのか」について、もう少し触れて欲しかったな、と感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年6月28日
読了日 : 2023年6月28日
本棚登録日 : 2023年6月28日

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