街場のメディア論 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2010年8月17日発売)
4.03
  • (396)
  • (519)
  • (256)
  • (38)
  • (10)
本棚登録 : 3657
感想 : 474
4

内田先生が教授を務めていた神戸女学院大学での講義をベースに書籍化したもの。メディアに関する授業であり、メディア志望の学生が多く聴講している授業であるが、メディアに対して、楽観的ではない論調の授業である。
医療と教育という、市場主義やイデオロギーをベースにものを語ってはいけないはずのものに対して、メディアがずっとそのように語ってきたこと。メディア自体も、医療や教育と同じく市場主義で語ってはいけないはずのものであったことに、メディア自体が気づいていないこと、そういったことにより、メディアの将来は決して明るくない、ということを書いている。
私はわこの本を電子書籍で電車の中で読み終えた。kindle unlimitedで読んでいるので、私にとって、本書を読むことの追加コストはゼロだ。また、私は図書館で本をよく借りる。それも、基本的にはコストゼロだ。そういった状況に対して異論をとなえる人たち、すなわち、図書館がなければ、自分の本を購入してくれて自分に印税をもたらしてくれていたはずなのに、それがなくなったために、自分は損をしている、と考える人たちがいることを内田先生は本書内で紹介している。それに対して、内田先生は、自分は全く構わないという考えを紹介している。
それは、もともとものを書く目的は、自分の考えを広く知ってもらうためであり、図書館で多くの人に自分の本を読んでもらうのは嬉しいことであること。まず読んでもらわないと、自分の本の中身を読者は知ることが出来ず誰も自分の本を買おうとしないはずであるが、図書館ではそのような機会を作ってもらえること。そういったことが、内田先生の考えの根拠である。内田先生が書いたものを、自分にとっての贈り物と考えてくれる人たちがいること、そもそも何かを書くというのは、まず商売ベースの動機で始まっているわけでもないだろうということでもある。
こういう考え方を初めて読んだが、なるほど、と思える考え方であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月28日
読了日 : 2023年1月12日
本棚登録日 : 2022年6月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする