かたち――自然が創り出す美しいパターン1 (ハヤカワ文庫 NF 461 自然が創り出す美しいパターン 1)

  • 早川書房 (2016年4月7日発売)
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感想 : 8

なかなかぶ厚い本で、科学の細部まで書いてあるので時間がかかる本だが、名著である。

この本の主張は進化論や遺伝子でわかった気になってはいけないということである。こうした説明の根底には物理・化学的基礎があるということである。

第一章は、形態学の祖であるダーシー・トムトンや、ドイツで進化論を優生学として展開したヘッケルなどの業績が書いてある。
第二章は、泡がテーマ、蜂の巣がどうして六角形で充塡されているのかという問題があつかわれている。
第三章は、波がテーマ、BZ反応によってできるターゲット(的)模様とらせんなどが、鉱物にもあらわれると指摘している。
第四章は、動物を体表にあるシマと斑である。チューリング・パターンや反応ー抑制モデルについて。
第五章は、素数ゼミなどの野生のリズムを論じている。
第六章は、植物の葉のつきかたについて論じている。フィボナッチ数列があらわれるのはいいとしても、その力学をどう説明すべきか、化学的な拡散モデルと物理的な収縮モデルが提示されているそうだ。
第七章は、胚の分裂をあつかう遺伝子の話しなのだが、こうした遺伝子はルーターであって、「こういう眼をつくれ」とプログラミングされているわけではないことが書かれている。自然はありあわせの道具で動物のからだを形成するとしている。

中田力『いちたすいち』にも脳が熱対流で形成されるという理論があったと思う。とくにチューリングの理論が示唆的だった。物の形をみるとき、どうやってできあがったのか、化学物質の拡散で考えてみるのは楽しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学史
感想投稿日 : 2016年9月1日
読了日 : 2016年9月1日
本棚登録日 : 2016年9月1日

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